キスから始まる恋は甘くて苦い

「あっ……本当に大丈夫、ですか?」

 驚いて蒼一を見返し、ほたるは目を見開いた。
 
 すごく、綺麗な人だな――

 ようやくまともに顔を見て、浮かんできた感想に彼女はぶんぶんと首を振った。

「ご、ごめんなさい」

 いくらなんでも不謹慎すぎ!

 ようやく落ち着きを取り戻し涙を拭う。

「謝るのはこっちの方だよ。ごめんな」

 優しい声がして顔を上げると、整った微笑みにほたるは目を奪われた。

「…………」

 どうしてか息が詰まって言葉にならない。

「ホントに大丈夫か?」

 固まってしまったほたるを心配そうに見つめる蒼一。

「……大丈夫です」

 こちらを見返す彼女はどこか沈んだ表情をしている。あんなに焦っていたことと何か関係があるのか……極度の心配性なのか。
 こうしていても埒が明かないので蒼一はまた笑顔を作った。

「そろそろ行かないと遅刻するぞ」

 制服と校章の色で彼女が同じ高校の1年生だということはわかった。
 
「あっ、そうですね!」

 弾かれたように我に返ったけれど、何かに思考を囚われているかのように再び浮かない顔つきになるほたる。

 なんか、心ここにあらずって感じだな。

 そこはかとないイラ立ちを覚えた蒼一は、妙に彼女の気を引きたくなった。