キスから始まる恋は甘くて苦い

「あれ、永瀬?」

 剣道着に着替えて男子更衣室から出てきた渡省吾(わたりしょうご)は、道場の隅にちょこんと正座しているクラスメイトに気がついて声をかけた。

「あっ、渡くん」

 知った顔に安心したのか、ほたるの肩から力が抜けていくのがわかる。

「見学? 剣道に興味あったんだ?」

 意外そうに尋ねる省吾。

「うん。辰巳先輩に誘われて、見てみたいなって思って」
「辰巳先輩が? へえ……」

 重ねて驚き、彼は顎に手を当てた。

「まあ、入ってくれるならありがたいけど」
「あっ、そうだよね。今日見て、よく考えてみる」

 真面目な応答に、省吾は思わずクスリと笑った。

「マネージャーも募集してるから、両方考えてみれば?」
「うん、ありがとう」

 省吾は軽く手を上げ、ほたるに背を向けて道場を横切っていった。