キスから始まる恋は甘くて苦い

 棟内に入って2階へ上がり、剣道場の前まで来ると蒼一は足を止めた。

「一礼して、入って」
「はい」

 道場に上がった蒼一の真似をして、お辞儀をしながら場内に入る。

「真野、見学者連れてきた」

 蒼一が女子生徒に声をかけると、彼女はすぐにこちらへやってきた。
 ほたるの鼻にバラの香りがかすめる。柔らかそうに波打つ髪と、キレイな顔立ちで……まるで女優さんのような人だと思った。

「1年生の永瀬さん」
「永瀬ほたるです。よろしくお願いします」
「マネージャーの真野瞳です。よろしくね」

 蒼一に紹介されたほたるを見やり、瞳は微笑んだ。

「わからないことがあったら真野に訊いて。俺は稽古で構ってやれないから」
「はい」

 視線を交わすふたり。
 瞳はそれを、複雑な表情で見つめていた。