キスから始まる恋は甘くて苦い

『辰巳蒼一』

 受け取った連絡先を見つめ、ほたるは目を細めた。

 こういう字を書くんだ。

 彼の名を構成する文字列を眺め、ほたるは無自覚で微笑んだ。

『蒼一先輩』

 そう呼ぶことを想像して、すぐに打ち消すように首を振る。
 それは、いきなり馴れ馴れしすぎる。

 先輩は、どうして私なんかに声を掛けてくれるんだろう?

 昨日、自転車でぶつかりそうになったことを気にしているだけなのかもしれない。けれど、あれはこちらの不注意だったのに。

 でも、優しい人だからな。

 彼と過ごした時間を思い起こすと、胸がきゅうっと痛んだ。

 ……先輩のこと、もっと知りたいな。