キスから始まる恋は甘くて苦い

「入ってないです」
「そっか。何か考えてる?」
「考えてないです。……あの?」

 ほたるが不思議そうに首を傾げた。その仕草ひとつも、可愛くてしかたがないと思ってしまう。

 麻生から奪いたい。

 そんな考えがよぎり、蒼一は眼差しを強めた。

「だったら、俺んとこに来いよ」
「えっ?」

 急に口調が強くなり、ほたるは面食らって蒼一を見返した。

「剣道部。今日、見学に来いよ」
「…………」

 返事がない。

 ヤバイ……強引だったか?

 もっと慎重に誘うつもりだったのに、まどろっこしくなって謎のスイッチが入ってしまった。

 こんなに余裕がなくなるなんて、まるで自分じゃないみたいだ。

「剣道、ですか」

 ほたるは思案していたのか、確認するように蒼一と目を合わせた。

「ああ。一応、部長やってる」
「ええっ! すごいですね」
「別にすごくはねえよ」

 素直な賞賛のまなざしに、まんざらでもない蒼一。

「先輩が剣道をしてるところ、見てみたいです」
「…………」

 嬉しい言葉に、一瞬、答えを忘れる。