キスから始まる恋は甘くて苦い

「きゃっ!」
「わっ!?」

 曲がり角を走り抜けようとした瞬間、現れた人影に驚いた蒼一は反射的にハンドルを右へ切った。その急激な動きに、自転車とともに地面へ倒れ込む。

 マジでびびった……ってか、痛ぇ……

「だ、大丈夫ですか!?」

 右足に痛みを感じてうずくまっているとぶつかりそうになった人物が駆け寄ってきた。

「ああ。大丈夫大丈夫」

 蒼一は相手を不安にさせないよう、笑顔を用意して顔を上げた。
 目の前には、黒縁メガネが印象的な可愛らしい女の子がいて。

 あれ、どこかで見たような……

 そう思い掛け、蒼一はぎょっとした。

 なんで泣いてんだよ……まさか、ぶつかった?

「キミこそ大丈夫? 怪我はない?」

 笑顔を引っ込めた蒼一が彼女を観察する。

「わ、私は平気です」

 確かに、見た感じ異常はなさそう……だけど、なぜ涙を流しているのか理解できずに蒼一は首を傾げた。

「救急車呼びますね!」
「えっ?」

 唐突な彼女の宣言に呆気にとられてしまう。
 さらに、スマホを取り出そうとしているのか鞄の中をゴソゴソとまさぐっている。

 テンパってんのか?

「いや、本当に大丈夫だから。キミに怪我がなくて良かったよ」

 蒼一は落ち着かせるように、ほたるの右手を掴んで動きを止めさせた。