キスから始まる恋は甘くて苦い

 いつもより早い時間に家を出て曲がり角の手前で立ち止まる。
 今日は防具を持って帰らなくてはいけないこともあって徒歩で来たけれど……目測よりも早く着いてしまったようだ。
 ゆっくりと住宅の塀に寄りかかる。昨夜は色々考えてしまってよく眠れず、大きなあくびが出た。

 たとえば、ほたると麻生が付き合ってるとして。

 その仮説に、萎えるどころか余計に想いが膨らんでしまった。

 まさか自分がそんなに諦めの悪いヤツだとは思わなかったな。

 こんな風に、自分の性質を引き出したり変えたりしてくれるものが“恋”なのだろうか。
 だとしたら、これは初恋になる。

 この歳で初恋?

 それなりの経験がないわけじゃないのに、うぶな事実に恥ずかしくなる。昨日まで知らなかった自分に戸惑ってもいる。

 もし、この恋と呼べるものが叶わなかったとしたら……

 そう考えるとにわかに背筋が寒くなった。