キスから始まる恋は甘くて苦い

「カノジョ?」
「じゃねえよ」
「ふうん……」

 そっけない回答に田中は不満そうに唇をとがらせた。そのあとすぐに予鈴が鳴り、蒼一は対話を避けるようにミネラルウォーターで喉を潤した。

 カノジョ、か。

 もし、そうなってくれたら……

 想像したら胸がドキリと高鳴ってしまった。

 俺は、ほたるのことを好きになったのか?

 まだどんな子なのかもよく知らないのに?

 自分は恋愛に向いていないタチだと思っていた。
 まして一目惚れなんて縁がないと思っていた。
 ただ、付き合ったことがないわけじゃない。

 いや、あの頃のことはあんま思い出したくないな……

 過去の記憶を振り払い思考を現在に戻す。そこにはただ『会いたい』という想いだけが残る。

 こんな出会いって……あるんだな?

 今までの考えを覆すような、世界が変わるような。
 のぼせた体を冷ますように、蒼一は冷えたペットボトルを頬に押し当てた。