キスから始まる恋は甘くて苦い

 もうすぐ昼休みが終わってしまうけれど、これからお弁当を食べる時間はなかった。そもそも食欲もなかった。

『ほたるが怪我しなかったんだから、いいんだよ』

 落ち着きのある声で言われた優しい言葉が耳から離れてくれない。

 昨日までは毎朝見かけるだけの人だった。

 自分とは違う時間の流れの中にいる人、関わることのない人だと思っていた。

 ……また会えるよね?

 それなのに、今はそんなことばかり考えている。
 ほたるは頬杖をついて無意識にため息をもらした。

 何かあったのかな?

 桂が心配そうに斜め前に座るほたるを見つめる。

 まさかメガネを掛け忘れるなんて。

 あの日からそんなことは一度もなかったのに。

 ほたるは嘘がヘタだからな……

 涙の筋が残っていたことを見逃さなかったけれど、それでも気づかないフリをする。
 こちらが過剰に反応したら、ほたるは何も言えなくなってしまうだろうから。