全てあなたに捧げるために

☪︎



「……透雅様!?」

明け方。もうすぐ太陽が昇るくらいの時間に、透雅様は帰ってきた。

鍵が開いて、そのまま玄関で崩れ落ちた主人は。

「飲み過ぎた……」

と、珍しく深酒したらしい。顔色が悪い。

「連絡を下さいましたら、お迎えに上がりましたのに」

翠は車の免許を持っているし、ちゃんと、この住処にも、桐生家の車は持ってきている。
だから、いつだって何時だって呼び出してくれれば。

「─馬鹿。こんな時間に、女性の翠を呼び出さないよ」

口元を押さえながら、そう言った透雅様。

「女性って……それ以前に、私はあなたの」

「大切なおまえにそんなことさせるほど、俺は落ちぶれちゃいないの。……おいで、翠」

”大切”─それは、とても嬉しい言葉。
でもだからって、この甘い言葉について行くのは危険。
分かっているのに、吸い寄せられるのは。

「……フフッ、あったかいな」

酔いのせいか、少し幼さが見える透雅様。
嬉しそうに翠を抱き締めて、そのまま抱き上げられる。

「きゃっ」

「翠」

「と、透雅様っ、お部屋が」

─そして、そのまま、透雅様の部屋に連れ込まれ。

「……起きてるだろうなとは、思っていたんだ」

「透雅様?」

「早く帰ろうと思ったのにな」

「……いつも頑張っていらっしゃるのですから、時折、羽目を外すのも良いことだと思います」

疲れることをして欲しくない。
せめて、翠がそばにいる時だけでも。
そう思うのに、彼は全然、翠を下ろす気配がなく。

「透雅様……?」

「翠」