全てあなたに捧げるために

o,+:。☆.*・+。



「─今日から、こちらで生活ですね」

桐生家所有の高層マンション最上階。
桐生家の旦那様と奥様─透雅様の御両親─には、透雅様が話を通してくださったらしく、翠は「よく励むように」と、祖父からの一筆を貰った。

翠は透雅様より何故か、透雅様を通してや、許可を得なければ、実家に帰ることを、連絡を取ることを許されていない。だから、その一筆も、透雅様が預かってきて、わざわざ翠に渡してくれた。

「ん。家具は適当に買って運び込んで貰ったし、暫くは在宅で仕事するつもりだけど、外に出る時はついてこい」

「かしこまりました」

「ああ、あと、」

「?」

「この家にいる間や、一緒に外に出る時は、夫婦として過ごすこと」

「……人の目が無ければ、必要ないのでは?外は理解出来ますが」

「良いから。おまえは執事としての期間が長いんだから、咄嗟に執事として振舞ったらどうする」

「それは……」

「いいから。執事服を身につけることも禁止する」

これは困った。
透雅様のわがままはよくある事だが……。

「洋服、執事服しか持っていないのですが」

「そんなことだろうと思って、向こうの、おまえの部屋のクローゼットに適当に買い込んで仕舞ってあるから。早くその堅苦しい服を脱いでこい」

「はあ……」

なんて用意周到な。翠は自身の荷物を持って、与えて頂いた一室に入る。

(……ベッドも、家具も全て新品に揃えて)

その上、デザインは翠の好みのものだ。
シンプルに、けどオシャレに調えられている。
無機質な自室とは違う……やっぱり、透雅様には敵わないと思いながら、翠はクローゼットを開けた。

とても小さなクローゼット。中にはコートがかかっていて、今の季節に必要ないな……なんて考えながら、服を探す。けど、どこにもない。

「?」

透雅様はどこを言っていたのかと悩んでいると、

「─あ、やっぱり」

透雅様が部屋の入口から顔を出す。