『─ねぇ、私の執事にならない?』
透雅様の専属執事となって、数年。
15歳の時だ。透雅様が20歳となり、お祝いされていた時。
そばに寄ってきた玻璃様─透雅様の妹様─が、
『私、12歳になるの。小等部を卒業するのよ。だからね、中等部からは高等部と階は離れるけど、小等部とは違って、同じ建物になるし、私と一緒にいた方が学業に専念出来るでしょ?お兄様の専属のままだと、お兄様がいる大学部と棟自体が離れるし……』
と、提案して下さった。
春から高等部にあがる翠のため、懸命に考えてくれたのだろう。……そう思うと、無下にはしたくなかったけど。
『申し訳ありません。…透雅様の許可がないと』
『ええ?どうして?翠が選んでいいのよ』
『ですが……』
─決められない。だって、それは、私の希望となるから。
透雅様が行けと言うなら、と、微笑んだ翠。
途端、その肩にズンッ、と、重みが加わって、慣れ親しんだ香りが鼻を擽った。
『─ダメに決まってるでしょ。玻璃』
少し低めな、主人の声。
『おまえも、即答で拒絶しろよ。俺のだろ』
『……申し訳ありません』
慌てて謝罪すると、
『ちょっとお兄様!翠に酷いこと言わないで!』
と、翠の前に立つ、玻璃様。
『何が酷いんだ?こいつは、俺の専属なの。だから、玻璃、おまえにはやんない』
『〜っ、馬鹿!お兄様の意地悪!』
怒って、御両親の元へ行く玻璃様の背中を眺めていると。
『こら』
と、透雅様に叱られた思い出。
(……もしあの時、玻璃様の手を取っていたら)
そんなことを考えて、すぐ、現実的では無いなと思う。
だって、それは”私は考えちゃならないこと”だから。
翠はぐちゃぐちゃにしてしまったシーツを畳み、ベッドメイキングをついでに終わらせておく。
これで、透雅様がいつ休みたいと願っても大丈夫─…ガチャ
退室し、シーツを洗い場へ持っていこうと思った時、部屋の扉が開いた。
シーツを足元に下ろし、頭を下げる。
「─お疲れ様でございました」
「ん」
「来栖様はもうお帰りに?」
「ん」
「お疲れでしょう。お風呂をすぐにご準備─……」
「─翠」
シーツ片手に部屋から出ようとした時、名前を呼ばれると同時に手を引かれて、バランスを崩す。


