菅野さん夢小説・短編集

「頼むよ、そこを何とか!」

整備兵に手を合わせ深々と頭を下げるのはあの私を拾ってくれた人、菅野さんだった。
昨日の戦闘に時空のゆがみか何かで平成の世からこの戦時の昭和にこの菅野さんの戦闘機に現れた私にかかったスパイ疑惑を「娘だ」と言い放ったことで助けてくれた人。今唯一安心できるのがこの人の半径一メートルなので、昨日からついて回っている。その菅野さんが何を頼んでいるかと言えば…。

「こいつ(私)をハーネスで俺につないで一緒に戦闘機に乗れるようにしてくれ!」

という、戦後の人である私が聞いてもとんでもないものだった。

「無理ですって!」

「そう言わずに!こいつは凄いんだ。俺がどれだけGをかけても気を保っていたし、俺よりも早く敵機に気が付いた。きっと俺が教えてゆけば俺以上の戦闘機乗りになる。」

「しかし、前例が…。」

整備の瀬尾さんは南方の陽で赤茶けた髪をかき上げながら私を見た。

「何、前例なら確か岩本さんが子犬を連れて戦闘に出てるという話じゃないか。犬がよくて未来のパイロットがダメというのは甚だ理論破綻している。」

はぁ

「仕方ありませんね。」

瀬尾整備兵は私にこっちにこいの合図をしてメジャーで躰の各所をはかっていた。

「上から何か言われたら、ご自分で作ったって言ってくださいよ!」

「やったあ!」

菅野さんは飛び上がらんばかりに喜んでいた。
私も、大変なことになったというのに菅野さんの笑顔が嬉しくてその胸に抱き着いた。

「菅野さん…。」

「おいおい、今日から菅野さんは、なしだ。」

「?」

「隊長か菅野隊長と呼べ。お前はもう立派に俺の隊員だからな。」

「はい!隊長!」

「おぉ!吾が部下よ。」

肋骨がミシミシ言うほど強く抱きしめられたので私は骨がおられないように胸筋及び僧帽筋に目いっぱい力を込めて防御した。

つづく