海沿いの公園の駐車場で、車は停車した。
すると、ずっと無言だった隣の男性が、いきなり私の目の前にタブレットを突き出した。
「九石精工の負債額、約五億円。銀行からの追加融資は全て断られた……だろ?」
「えっ⁉ ど、どうして……そんなことをあなた、が……!?」
声が震えて上ずってしまった。
だけどそれは、仕方ないと思う。
突然『主が』なんて言われ、有無を言わさず拉致られて、挙句の果てには、父の会社の負債の詳細まで把握してたら……。
誰だって、裏の世界の人だと思うじゃない。
ドラマや映画でよくある、極道の若頭が目の前に突然現れるような……。
裏社会に、借金情報が漏れているとしか思えない。
男は視線を逸らさず、真っすぐと私を見据えて、冷たく言い放った。
「この程度の情報、呼吸するように入ってくる」
こ、呼吸するようにって……?
裏社会の人って、本当に借金の状況を全て把握してるんだ……!
恐怖で思わず生唾を飲みこむ。
「借金を帳消しにしてやるから、俺の妻になれ」
「……は?」



