その後、担当者から連絡が来て、十九時半に駅前のカフェで会うことになった。
職場を後にして、担当者と会うためにカフェへ向かう。
すると、園を出てすぐのところに停車している黒い高級セダン車から、スーツ姿の男性が降りてきた。
「九石李茉様ですね。私、及川と申します。主がお話を望んでおります……ご同行願えますでしょうか」
抑揚のない声。有無を言わせぬ言い方に、思わず一歩後退ってしまった。
けれど、背後に回り込まれて、車へと強制誘導されてしまう。
何が起きているのか理解が追いつかぬまま、後部座席のドアの前まで進まされてしまった。
及川と名乗る男が、静かに後部座席のドアを開けた。
そこには──三つ揃えを着こなした男性が、長い脚を組んで座っていた。
「お乗りください」
「っ……」
及川の凄みのある声音に逆らえず、私は車に乗らされてしまった。
淡いブルーライトに照らされた男性の横顔は、雑誌から飛び出してきたような端整さ。
思わず見惚れた瞬間、「出発します」という及川の声にハッとし、慌ててシートベルトを締めた。
しまった……‼ 降りればよかった。
後悔しても、もう遅い。
隣に座る男は一言も発さず、ただ圧倒的な存在感だけが車内を満たしていた。
──ドラマでよくある誘拐シーンみたい。
私、どこへ連れていかれるの……?
流れる景色を目で追い、心臓が痛いほど脈を打つのを感じていた。



