職場である【こもれび幼稚園】に着くと、いつものように目まぐるしい業務に追われる。
私、九石李茉(二十八歳)は、このこもれび幼稚園で教諭として働いている。
園児たちの笑顔にいつも癒やされているけれど、今日の私は、どれだけ笑顔を向けられても、父の会社のことで頭がいっぱいで、仕事に集中できそうにない。
「りませんせい、どうしたの?」
小さな手が私の袖を引く。心配そうな瞳に、慌てて笑顔をつくった。
無意識に顔をしかめていたようだ。
「ん? 何でもないよ。さ、お着替えしようか」
今日は砂場遊びをしたから、園児も私も泥だらけ。
園児たちの着替えを終わらせて、自分も更衣室でジャージに着替えた。
脱いだ服をロッカーに入れようとして、スマホが目に留まる。
どこかの銀行から融資してもらえるといいんだけど……。
胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
──お父さんの会社を守りたい。
私が、守らなきゃ。



