あたしって意地悪かしら。
でも、二村さんにされた様々な仕打ちを考えるとまだまだ足りない。
「”これ”大いに役立ちました。二村くんはすっかり信じて。もう婿気分。でも人って分かりませんね……」
「私にも分かりません。部長から大方の話は聞いていましたが、瑞野さんの気持ちも分かりませんし」
瑞野さんが好きなのは―――やはり啓なのだろうか。
お腹の中には二村さんの子供が居るというのに。
啓がそれを受け入れて将来一緒になる―――という構図は思い浮かばなかったことはない。
啓は―――優しいから。
「柏木補佐は―――まだ部長のことが―――」
あたしの考えを読んだのか緑川さんが少し不安そうに質問を投げかけてきた。
それに関しては何も答えられなかった。
「距離を置く―――とは具体的にどれぐらいですか」とあたしは話題を変える為聞いた。
「分かりません。二村くんの出方次第か、と」
「本当に瑞野さんのことを吹っ切れたら、元に戻る可能性もあるってことですか?」
「……分かりません」
まぁいきなりそう問われても「YES」か「NO」で答えられたら簡単な問題だ。
でも世の中その二択しかないわけでもない。
「気持ちが落ち着くまで―――少しゆっくりなさる方がいいかもしれませんね。でも家に引きこもりっぱなしだと精神的に病んでしまうかもしれません。適度な散歩や普段できなかったことをするのもいいかもしれません」
「あり……ありがとうございます……葉月、最初あんなに柏木補佐を嫌ってたのに、こんなに親切にしてもらえるなんて……」
緑川さんはポロポロと涙をこぼして部屋着にしているのだろうスウェット素材のワンピースのスカート部分を強く握る。
「気をしっかり持って。あなたの選択はきっと―――間違ってない」
あたしは緑川さんに歩み寄ると膝を落とし彼女の手の上にそっと手を重ねた。
緑川さんはあたしに突如抱き着いてわんわん泣いた。
きっと、緑川さんにとってこの選択は悩みに悩んだ末出した結末なんだろう。
誰かにそう言ってもらえて自分は間違ってない、と言ってもらいたかったに違いない。
そう考えると緑川さんがとても小さな子供のように思えてきた。
ユーリもきっとこうやって分岐点で悩んで泣いて、誰かに縋りたいと思う日が来るのだろうか。
あたしはそのき―――ユーリの傍にいてあげられない。
そう思うと自分も何だか泣きたくなった。



