食卓に並んでいたのはクリームコロッケと野菜いっぱいのミネストローネ、彩がきれいなサラダとタコとサーモンのカルパッチョだった。
どれもまるでお店に出せる程のクオリティ。啓も料理が上手だけど紫利さんも上手で羨ましい。
「紫利さん、やっぱり料理ができない女はダメでしょうか」
至極真剣に聞くと
紫利さんはちょっと困ったような悩んだような顔をして「ダメじゃないと思うわよ?今は家事は女がやる時代じゃないしね」とほほ笑んでくれた。
それにちょっとほっ。
紫利さんは頬杖をついて
「瑠華ちゃん、いつになく顔色がいいわね。啓人と何かあった?」と色っぽく口角を上げてあたしの顔を覗き込んでくる。
あたしは飲んでいたミネストローネを危うく吹き出しそうになった。
「いえ……何も…」と答えるのが今度は酷く心苦しい。
「いいのよ、大人の男女だし何かあってもおかしくないわ」と、とうふふと紫利さんは意味深に微笑む。
「ゆ、紫利さん!お土産買ってきたんですよ。奈良の地酒です」とあたしは日本酒が入った瓶を紫利さんに手渡した。そして村木さんと葵さんに買っていった同じおまんじゅうも取り出し「こちらはご主人に。紫利さんを一日お借りしてしまいましたから」
「あらー、良かったのに。出張でしょう?旅行じゃあるまいし」
「そんな、手ぶらで帰るわけにはいきませんよ。July.(ユーリ)」あたしは大画面のテレビで海外向けのアニメを見ていたユーリを呼び寄せると買ってきた鹿のぬいぐるみを手渡した。
「Souvenir.(お土産よ)」
「Wow,deer!(わ~、鹿さんだぁ)」
「The teddy bear has made a new friend.(クマちゃんにお友達ができたわね)」
「Yeah.(うん)」
ユーリはアニメそっちのけで早速鹿のぬいぐるみとクマちゃんのぬいぐるみでおままごとを始めている。
本当はヘドウィグのぬいぐるみを買ってあげたかったけれど流石になかった。鹿は―――ハリーの守護霊だ。この雌かどうか分からないけれど鹿がユーリを生涯守ってくれますように、と願いを込めて買った。
「ホント、子供って見飽きないわ」と紫利さんがユーリを微笑ましい目で見つめる。
紫利さんが居てくれて本当に良かった。



