Fahrenheit Ⅳ


「分かりました。貴重な情報ありがとうございます」


「いや、俺は何も。ただ空汰のヤツやけに上機嫌でさ。こないだまで散々副社長の娘のことこけ下ろしていたのに」


本当に―――身代わりの早い男ね。でもそう簡単にいくかしら。


そうはさせない。


「では私はこれで」と言って伝票を取ると


「ねぇ、就職が決まったらまた水族館行かない?」と呼び止められ、あたしは目をまばたいた。


「いいですけど……時間があれば」と適当に受け流し、あたしはお会計に向かった。


背後で「よっしゃ!頑張るぞ!」と葵さんの声が聞こえたが、そんなに水族館に行きたいのかと思いながらあたしは店を出た。


家に帰ると


「Welcome home,Mom. (お帰りなさ~い、ママ)」とユーリが走ってきた。手にはあたしがあげたくまちゃんのぬいぐるみを持っている。


「It's dangerous to run.(走ると危ないわよ)」と慌てて紫利さんがユーリの後を追いかけてくる。


「I'm back,July.Did you cause any trouble for Yukari-nee? Did you behave yourself?
(ただいま、ユーリ。紫利お姉さんに迷惑かけなかった?いい子にしてた?)」としゃがみながら聞くとユーリは可愛らしく微笑んで「Sure.(うん)」と元気よく答えた。


「That was fun, wasn't it?(楽しかったわよね~)」と紫利さんが添えるとまたも「Yeah! I played with Yukari a lot.(うん!ユカリといっぱい遊んだ)」と返事が聞けてちょっとほっとした。


「瑠華ちゃんご飯は?食べてないでしょ?お腹すいてるんじゃない?」


紫利さんに聞かれてあたしは無意識にお腹の辺りをさすった。


確かにお昼のSAでお焼きを食べたぐらいでそれ以外口にしていない。


「今日はクリームコロッケよ。食べる?」クリームコロッケ?美味しそう。


「はい、ありがたく頂戴します」あたしは頭を下げた。