Fahrenheit Ⅳ


「それから今度マナミさんがダブルデートしましょうと…」


「マナミってこないだクリスマス前にデートしてた女の子?」葵さんは目をパチパチ。


「そうです。マッチングアプリを初めて良さそうな人が居たから会って欲しいと言われまして、でも私一人とマナミさんだとおかしいでしょう?ですから葵さんもご一緒していただけると助かるのですが」と言うと


「勿論!」と葵さんは前のめりになって勢い込んできた。


正直、面倒なことを頼んだ気がしたが葵さんの返事は想像もしてなかったものだった。


「良かった。では日取りが決まり次第また連絡します。今日はお土産を渡すのと、その相談だけでしたので私はこれで」と言って伝票を持って立ち去ろうとすると


「あ、あのさ!空汰と副社長の娘、復縁したって知ってた?」


え――――?


緑川さんが二村さんとやり直す、と?


それは意外な情報だった。


「緑川さんは何と?」思わずあたしは席に逆戻り。


「よく分かんねーけど、向こうからやり直してもいい、だけど今後ミミちゃんと関わらないで欲しいって」


それは最もの条件だ。


「それで二村さんは納得した、と」


「そうみたい。って言うか今あいつにとって副社長の娘は最大のカードだろ?絶対手放したくない筈」


そう、元に戻ったと言うことか。厄介なことになった。ジェイクも手を引いたし、完全に分が悪い。


思わず眉間に皺が寄るのが分かった。


「やっぱ良くない状況だよね」と、あたしの表情を読み取ったのか葵さんも不安顔。「何で気持ちが変わったんだろう」


何で―――?


それはあたしも知りたい。


新年会、あんなに派手に言い合いしてたのに。


二村さんを一人占めしたい、と言う単なる女心か、それとも他の何かを考えてるのか、近々二村さんの監視が緩んだ隙に緑川さんの本音を聞く必要がある。