Fahrenheit Ⅳ



早速電話で桐島を呼び出すと


『は?ヤダよ。俺だって疲れてるもん。それに家ではマリと朔(さく:きりしまの子供)が待ってるし』と即答。


まぁ、そうだよなー……


桐島にも家庭があるしな。マリちゃんと子供がいる所邪魔しちゃ悪いよな。


「ごめ……」


自分の軽薄さをちょと呪い謝ろうとすると


『お店の残り物でいいのなら持ってくけど?』


「え?」


『なんか声に元気がなかったからさ、俺まで頼るなんて相当なことがあるんでしょ?そっちで作る時間はないけどちょっとなら話も聞くよ』


桐島


桐島


KI・RI・SHI・MA!


俺は何て良い同期を持ったんだ!


緑川と二村と瑞野さんとは大違いだな。


それから三十分程で桐島は家に来た。タッパーに店(直営店の居酒屋)で残ったと言う料理を数種類詰め込んでくれて。


猫のルカはゲージごと俺の寝室に移動させて、幸いにもこの時間帯はおねむだったのかそっと移動させてもすやすやと心地よさそうに眠っていてくれたのが助かる。


桐島はすぐに来てくれたのか、タッパーはほんのりまだ温かい。


「桐島ぁ」思わず抱き着きそうになったが、桐島は「やめてよ、気持ち悪い」とサッと避けた。


「いつも黒桐とか言ってごめんな」


「は?」


「いや、気にしないでくれ」


俺はタッパーから皿に移すのも面倒でタッパーに直に箸を入れた。


桐島が持ってきてくれたのはじっくり煮込んだ豚バラ大根と、これまた何日か付け込んだであろう味玉、餃子とポテトサラダだった。


どこにでもある居酒屋メニューだったが疲れと空腹でやけにうまく感じた。