「おかえりなさい、出張お疲れ様です」と瑞野さんが出迎えてくれた。
瑞野さんは体調も問題がなさそうで、いたって元気そうに見えた。お腹の子は無事みたいだ。
「瑞野さんもお疲れ様でした。何か問題は起こりませんでしたか?」
「はい。大丈夫です。ほとんど電話番みたいなもので」
「それは安心しました。これ瑞野さんにお土産です。食の好みが分からなかったので、お部屋のインテリアにでも」と言って瑠華は四角い箱が入った袋を取り出し、瑞野さんは早速中を開けていた。
瑠華が瑞野さんに選んだ土産はガラス細工のようで鹿の形をしていた。
「鹿はハリーポッターのハリーの守護霊でもあり、ハリーの守護霊、パトローナスである雌鹿を指し、父ジェームズの動物もどきの姿でもあります。銀色の牝鹿は母リリーやスネイプの守護霊であり、ハリーを剣へ導く重要な役割を果たしました。ポッター家を象徴する絆です」
つらつら…
瑠華、その説明はいいから。
「はぁ…」と瑞野さんも戸惑っている。
「つまりあなたの守護神になってくれることを願って選びました」
そーだったんだぁ…
「でもあたし父のことはあまり……」
そう言えば瑞野さんの父親はDVの最低野郎だったな。
「ではお母さまの守護霊、牡鹿にしてしまえばどうですか?」
「それなら」と瑞野さんは微笑んだ。それから瑠華は瑞野さんの耳元でそっと何かを囁き、彼女の手に何かを握らせた。瑞野さんは一瞬目を開いたものの、すぐに嬉しそうに笑ってそれを大事そうにスカートのポケットに仕舞い入れていた。
な、何を渡したんだろう……
「神流部長、お疲れさまです」と隣のブースから顔出したのは
出たな!村木!
「村木さん、ちょうど良かった。村木さんにもお土産を」
はぁ!?陰険村木にまで選んでたのかよ。とちょっとイライラしていると
「奈良公園で買った鹿せんべいです」
「………」
村木は沈黙。
俺と佐々木は思わず口を覆って笑いだしたいのを何とか堪える。
「あ、間違えました。奈良公園で買ったお饅頭です。そちらの皆様で分けてください」
「……それはご丁寧に」
村木は不愛想に受け取り、
「くくっ、あの村木の顔見た?」と俺は佐々木に問いかけた。
「はい。柏木さんの攻撃は流石ですね」と佐々木も口元を押させて肩を震わせ笑っている。



