Fahrenheit Ⅳ



大仏の鼻の穴をくぐる瑠華、可愛かったが


「その写真間抜けなので削除してくださいね」と言われ


「うんうん、後でね~」削除する気ナッシング。


その後は奈良公園に行き、俺たちは広い芝で思い思い過ごしている鹿に買った鹿せんべいをあげていると


「キャー!」


近くで瑠華の声が上がった。


何事か駆けつけると鹿せんべいの一つを持った瑠華が鹿たちに囲まれている。


奈良公園の鹿は大人しいイメージがあるが、あなどるな。奴らの餌への貪欲さは半端じゃない。


鹿は瑠華のお腹に噛みついてまで餌を欲しがっていそうだったが、その前に


ひょぃ


と瑠華を抱き上げ、そのふしに瑠華の持っていた鹿せんべいが芝生に落ちた。芝生に落ちた鹿せんべいを我こそは、と鹿たちが群がっている。


俺に抱き上げられたままの瑠華がちょっと涙目で


「こ、怖かった…」といつのなく素直。


「柏木さん大丈夫でしたか!?」と佐々木もすぐに駆けつけてきた。


「ええ、何とか……鹿はもっと大人しいものだと思ってましたが…」と瑠華が言うと


「それより、いつまでその恰好で居るんですか?」と佐々木が俺を睨み上げる。


はっとなって気づくと俺は瑠華を抱き上げまま。


「あ、あはは~柏木さんは小さいから抱き上げやすい」と言ってストンと瑠華をゆっくり下ろすと


「小さいだけ余分です」と瑠華にも睨まれた。


それでも何だか全てが楽しい。


気持を確かめ合えたからからかな。


瑠華もいつになく楽しそうに見えた。


瑠華が行きたがった東大寺にも奈良公園にも行った。後は帰るだけ。


今度は俺と瑠華、半々で運転をした。


途中何度かSAに寄ってタバコやトイレ休憩に寄ったが、社に帰りついたのは夕方だった。


出張とは言え楽しかったな。これからまた二村の目が光る中仕事かぁと思うと気が滅入るが、でも俺たちの仲に確固たる何かが存在した今、





二村を恐れる必要はない。



待ってろ、二村、必ずぶっ倒してやるからな。