午前9時。俺と佐々木がロビーに着くと、すでに瑠華は豪華かつオシャレなソファに腰掛けていた。
今日は昨日のスーツから一転、ピスタチオ色のモヘアニットに3Dレースがゴージャスなビスコッティ色の上品なスカート姿で観光マップらしきものを眺めていた。
「お待たせ~」と俺が手を振ると瑠華がゆっくりと顔を上げ、瑠華が軽く手を挙げた。その節にニットの袖が少しだけ持ち上がり、瑠華の細い腕に昨日俺があげたティファニーの時計が彼女の細い手首を彩っていた。
瑠華―――早速つけてくれたんだ。
嬉しくなって顔がにやけそうになるのを何とか堪える。
何でもないフリでチェックアウトを済ませ、近くのカフェで朝食を済ませた。俺と瑠華は朝食を摂らない派だが佐々木は撮る派だしな。
俺と瑠華はコーヒーだけだったが、佐々木は茶粥(奈良名物)を添えたモーニングセットを頼んでいて、朝から米かよ、と若干うんざりしながらも佐々木は旨そうにそれを食べていた。
その合間に
「部長、奈良と言えば東大寺と奈良公園ですよね。時間があれば行ってみたいのですが」と瑠華が言ってくれて
「うん!行こう行こう!」
瑠華だったらすぐ帰ろうと言い出すかと思ったが、それなりに観光を楽しもうとしている。それが嬉しかった。
瑠華の言った通り最初は東大寺に向かい、東大寺には大仏殿と法華堂、戒檀堂があり、大仏殿にある大仏の鼻の穴を潜り抜けるといいことあるよ、と言い瑠華を潜り抜けさせようとしたが
「いえ、でもこの穴かなり小さいですよ」と瑠華は渋っていた。
確かに縦約37cm、横約30cmで、大仏様の鼻の穴とほぼ同じ大きさと言われている。
でもご利益もあり、 この穴をくぐり抜けると、無病息災や祈願成就、あるいは頭が良くなるといったご利益があると伝えられているらしい。頭は十分間に合ってるけど、祈願成就は必要だしな。
「体を横にしたり捻ったりしたら瑠……柏木さんなら大丈夫」
「それって小さいって意味ですか」と瑠華にちょっと睨まれたが、
「俺らは絶対無理だけど、せっかく来たんだし経験だと思って」とほぼ強引に瑠華を大仏の鼻に促すと瑠華は屈んで鼻の穴へと入っていった。
鼻の穴から出てきたとき「やっぱり厳しいですよ」と瑠華が顔と上半身をちょっと出し、俺は思わず写真を撮った。
「何撮ってるんですか」と瑠華に睨まれたが、
「はは、記念記念~」と言い俺は瑠華を引っ張って、完全に出るのを手伝った。
「部長、あとでその写真転送してください」と佐々木に言われ、
「え?ヤダよ、めんどい」
「昨日のソフトクリームの写真と交換で」
佐々木は目を血走らせ、勢い込んできた。
佐々木、怖ぇえよ。



