Fahrenheit Ⅳ


浴場に行くために用意された小さな籠に俺たちはタオルだけ入れていたが、瑠華の籠には色々詰まっていそうで、その上にバスタオルが乗せてある。髪はゆるくくくってある。


「あ、柏木さんだ」佐々木が声を掛けようとする。


てか瑠華……浴衣姿も超可愛いんだけど!


「浴衣姿も可愛いですね~」と佐々木はぼそっと一言。


だが、瑠華は電話中で俺たちに気づいた様子はない。


「今、奈良に来ています。―――え?単なる出張です。


お土産は何が宜しいですか?スノードームを貰ったうえ、一方的に付き合ってもらって、しかもホテル代も払ってもらって。


鹿せんべいとかいかがですか?


―――え?要らない?」


瑠華……鹿せんべいは人間が食うもんじゃない、と思いつつ


って、ちっがーーーーう!相手は誰なんだっ!英語じゃないからマックスじゃないことは確かだけど、スノードーム……ホテル代!?


相手は紫利さん??じゃないよな。ちょっと聞こえた声が男の声だった。


え…ちょっと!!


瑠華が電話を切ったとき、俺と佐々木の存在に気付いた瑠華。


「お疲れ様です」と瑠華は何事もなかったように律儀に頭を下げる。


最上階の大浴場に行くまで俺たちは無言だった。


大浴場に向かって浴衣を脱ぎながら


相手は誰なんだ!スノードーム!?ホテル代!?


瑠華はその男と関係を持ったのか!?と考えながら浴衣を脱いでいると、隣で同じく浴衣を脱いでいた佐々木が


「やっぱり彼氏なのかなぁ」と弱弱しく呟く。


「は?」俺の浴衣がバサっと床に落ちた。


「だってホテルとか言ってたじゃないですか……柏木さんはそういう軽薄な人じゃないこと知ってるすからホテルへ行くってよっぽどの仲かも…」


「気にしたってしょうがないだろう。彼女だってプライベートがある」と俺はボクサーパンツを脱ぐと、俺の倅が動揺なのか僅かにふるふると揺れていた。それを見た佐々木が自身のパンツを脱ぐ手を止め、


「ぼ、僕後から入っていきます」と言い出した。


「は?何で?」


「いや……部長の前で脱げないって言うか……」


「倅の問題か」佐々木の両肩にポンと手を置くと「気にするな、倅の大小なんてちっぽけな問題だ」


問題は瑠華が誰とホテルに行ったかなんだよ!!!!