Fahrenheit Ⅳ


それから俺たちは食事をしながら飲みながら世間話を交えて今日の仕事の報告会。


「大した問題はなさそうでしたが。木藤支社長がお留守で残念でしたね」と瑠華が二杯目のビールを呑みながら少し眉間に皺を寄せる。


そうだった。運悪く木藤支社長は京都支社へ向かっていた。本来の目的とは違うが、木藤支社長と少し話がしたかったが。


「帰ったら窺った旨を報告しましょう。そのとき少し話せれば」


「そうだな。それしか方法がないしな」


む゛~と俺が唸ると


何も知らない佐々木が「木藤支社長とお会いしたかったんですか?」と目をきょとんとさせる。


「まぁ、ちょっとな」と残りの半分のビールを一気に飲み干すと


「何か気難しそうな感じみたいですね。支社長の秘書課の社員とすれ違ったとき、出かけてくれて良かったって言ってましたよ?」と佐々木が言い


「マジ?」


俺は肩を落とした。


「話し方一つで何とでも変わりますよ。電話は私がします」と瑠華が軽く挙手。


まぁ?瑠華ならその辺そつなくやるだろうが。


「この卵とトマトの炒め物おいしい」と瑠華はまるで気にしてない様子でトマトを口に入れている。


ホント、マイペース。


でも美味しそうに食べる瑠華、やっぱ可愛い。


佐々木はビールを半分程飲むとトイレに立って行った。


「そう言えば、ユーリは大丈夫なの?」と今更になって心配が蘇った。何と言ったって母親が一泊二日の旅行ではないが、出張だ。


「ええ、紫利さんに任せてきました。泊りでもOKと仰ってくださって。ユーリもすっかり紫利さんに懐いていて。今じゃ母親が二人いるみたいです」


「そっか、紫利さんがついててくれたら安心だね」


「ええ、義母が紫利さんのような人だったらいいのに」と瑠華はちょっと目を吊り上げてビールをまたも一気飲み。





「俺と結婚したら問題ないよ?母親いないし」




何の考えも無しに言ってしまったあとはっとなった。


「は――――?」瑠華がたっぷり間を開けて目を開く。


「いや、今のなし。バーチャル的な?」あはは!と強引に笑って見せたけれど、キマヅイ空気で場が一瞬で凍り付いた。


いつもは佐々木の存在が鬱陶しいが、今だけは別。佐々木!いつまで便所行ってるんだよ!早く戻ってこの空気何とかしてくれ!と願っているとそれから五分程無言で食事をしていた俺たちの元に佐々木が戻ってきた。


「トイレ混んでました~」と呑気にハンカチで手を拭きながらのんびりと言い現れた佐々木。


「どうしたんですか?なんか暗い雰囲気ですけど……」


く、暗い?


やっぱ言うんじゃなかった~~~(泣)


「暗くはないですよ。別に。いつもこんな感じです」


それは本心?それとも誤魔化す為?


本心の方が多そうな気がしたが、佐々木が戻ってきて場は少しだけ明るくなった。