Fahrenheit Ⅳ


俺たちはひとまず瑠華が予約してくれたホテルにチェックイン。


瑠華が予約してくれたホテルは意外と立派で、天然温泉もあると言う。俺と佐々木は思わず顔を合わせた。


「社用車利用のお陰でだいぶ経費が浮きましたので、いいホテルが予約できました」って言うけど。


相変わらずデキる女は違うな。


俺と佐々木はツインルーム。瑠華だけはシングルルームの予約でそれぞれチェックイン。カードキーを預かり、ひとまず部屋に入った。


部屋も申し分なく広い。ただのビジネスホテルではなくゆっくりくつろげそうだ。


セミダブルのベッドが二つ、大きなテレビとその横には女性が化粧をしやすい大きな鏡とカウンター。いかにも座り心地の良さそうな椅子が二つ並んでいる。


「すっごい、眺めもいいですよ~」と佐々木は窓のカーテンを開け、外を眺めている。カーテンの向こう側には広いベランダが広がっている。時間帯が時間帯だったからか、あまり景色は良いとは言えなかったが、所々点在した寺や神社がライトアップでもしているのだろう、ぽつりぽつりと光が輝いている。


「この後7時からご飯食べに行くんですよね~」と佐々木はすっかりリラックスモード。


食事はどこでするか決めてないが、全員疲れてるから近くの居酒屋で適当に済ませるつもりだ。


「なぁ、さっきの柏木さんの写真転送しろよ」と俺が言うと


「ええ?」と佐々木はどこか不服顔。


その時だった。


TRRRR


俺の携帯に電話が掛かってきた。ナンバーは俺が猫のルカを預けたペットホテルの番号だった。


「わり、俺電話。ついでにタバコ吸ってくる」と言って部屋を出ると


「はい、神流です。ルカに何かありましたか?」と不安そうに聞くと


『いいえ~、ルカちゃんとっても元気にしてますよ。飼い主さんご心配させてるかと思って一応報告に』


ほっと胸を撫でおろした。


「迷惑かけてませんか?」


『いいえ~、でも飼い主さんが恋しいのかそわそわしている感じはしてますが』と言うと『宜しければテレビ電話に切り替えます?ルカちゃんの様子を少しでも見たら飼い主さんもルカちゃんも安心するかも』と言われ、俺は慌ててテレビ電話に切り替えた。


テレビ電話に切り替えると、小さなルカが映しだされ短い脚をばたつかせながら『にゃぁ』と鳴いた。


「お~ルカ~元気かぁ?いい子にしてるかぁ?店員さんに迷惑かけちゃだめだぞ」と言うと、ルカは頷いたように『にゃぁ』と鳴いた。


「可愛いなぁ。俺のお姫様。すぐに迎えに行くからな」と画面にキスをしていると





「部長、呼ばれた気がするんですが」




と人間の瑠華がすぐ背後に居て、びくぅ!俺はすぐに携帯を背に隠して


「あ、ちょっとプライベートな電話?」と言うと瑠華はどこか訝しむかのように首を傾け、


「じゃ、じゃぁ切るから」と電話に耳を当てて俺は強引に通話を切った。