Fahrenheit Ⅳ


「あれ?どこかへお出かけですか?スーツケースなんて持って。出張ですかぁ?」


と二村がのんびり聞いてくる。


「ああ、まぁな」俺は不機嫌に答えた。瑠華はただ黙って前を向いている。佐々木はここで一波乱起こらないかはらはらした面持ちだ。


「どこへ行くんですか?」


「お前にゃ関係ねぇ」


「ひっどい言い方ですね~、俺神流部長に嫌われることしましたぁ?」


いっぱいしてきただろうが!数えきれないぐらいにな!


と怒鳴りだしたい気持ちを何とか抑え、この様子からすると緑川と話し合ったんだな、と勘づいた。しかも俺ら三人が留守にしたら瑞野さんに近づくことも可能だ。こいつにとってこれ以上にないチャンスだろう。


瑞野さんには困ったことがあったら何でもいいから電話してきて、と言い置いてきたが…


少し心配だ。


ポーン…


エレベーターが到着して重い鉄の扉が開き、先に瑠華が乗り込んだ。続いて佐々木。俺が最後に乗り込み扉が閉まる瞬間、二村がにやりと笑った気がした。


嫌な予感がした。


瑠華は扉が閉まる瞬間”開”のパネルを押し


「二村さん、私たちが留守にしてるからといって何かしでかさないでくださいよ。私、見張りを付けているので、あなたは何もできません」


見張り―――?


綾子のことか?


「見張りだなんて、俺が何をするって言うんですか」と二村が大げさに肩を竦める。その顔には気味悪いにやにや顔が浮かんでいた。


「さぁ?」瑠華は相手をちょっと挑発するように口角をちょっと上げると二村の顔色が変わった。今度は”閉”パネルを押し、扉はきっちりしまった。


「柏木さん……見張りって……?」とこそっと聞くと


「村木さんにお願いしておきました。彼があの部署から抜き出て瑞野さんに何か害を加えないように」


村木―――?


最近思うけど瑠華と村木って仲が良いよな。最初はいがみ合ってたけど、まぁ村木も喋ってみたら案外悪いヤツじゃないってことに最近俺も気づいたけど。何だか面白くない。もっと俺を頼って欲しいのに。


でも見えない所まで流石に難しいよな~……


地下駐車場に向かって用意された「いかにも!」」と言う社用車のプロボックスのトランクにそれぞれスーツケースやボストンバッグを詰めると、出発だ。


運転席には俺、後部座席には瑠華と佐々木が乗り込み、車を発車させた。


正直、瑠華には助手席に座って欲しかったんだけどな~…


でも佐々木もいるし無理かぁ…