Fahrenheit Ⅳ


思った以上に緑川の理解力と協力を得られてちょっと拍子抜け。


「それに悪い男に引っかかったと思ったらパパもしばらくはお見合いしろなんて言ってこないだろうし」


なるほど、そう言う魂胆もあったのか。


「で、葉月はどうすればいいんですか?」


ティーカップを両手で包みながら上目遣いで聞かれ


「とにかく妊娠のことはそのままにしておいて、やり直そうって言って復縁してくれ」


俺の意見に緑川はこくんと頷いた。


「ホントは二村くんの傍にも居たくないんですけど」とちょっと不服そうではあるが。


「いきなり『はい戻りましょう』って言ってすぐ戻れるもんか?最初はぎくしゃくするだろ。少しぐらい距離感があったって疑われない筈」


「なるほど」ぽんっと緑川は手を打った。


「じゃぁ部長、いい男紹介してくださいね」


「はぁ?何でそうなる」俺が顔を歪めると、緑川は俺の鼻先に人差し指を向けて


「ギブアンドテイクですよ。葉月、部長の言う通りにする代わりに葉月も見返りがほしいもん」


こいつ、ちゃっかりしてやがるぜ。


「紹介できるヤツはいないが最大限協力するよ」と俺は苦笑い。


「うふふ、ありがとうございま~す」


と言うわけで緑川との話も終わり俺はカフェで緑川と別れた。


家に帰るといつの間にかゲージから出てきたのか猫のルカが「にゃ~ん」と言って可愛くお出迎えしてくれた。玄関口で靴を脱いでいる最中も足元に顔を撫でつけてはごろごろと喉を鳴らしている。


よく見たらゲージの扉は開いていた。出ていくときちゃんと締めなかったんだな。


ルカは俺がいない間俺の部屋で思い思い遊んでいたのか、あちこちの調度品や家具がひっくり返ったり転がっていたりしていた。


「オーマイガー」額に手を当て


「人間の瑠華は大人しいのになぁ。お前はお転婆だな」猫のルカを抱き上げると「にゃぁ」とルカは満足そうに笑った。


その一つソファのクッションをひっかいたのか、そこから羽毛が飛び出ていた。その一つの羽根が猫のルカの頭にちょこんと乗っかっていて、ちょっと天使のように見えた。


「ま、いいか。俺の天使だな、お前は」と言って顔を覗き込むと、ルカは「にゃぁ」と小さく鳴いてまた再び笑ったように見えた。