Fahrenheit Ⅳ


な、何でそーなる!


「あいつに言いくるめられたのか?」


俺が思わず前のめりになると


「違います。パパがそろそろ見合いしろって言ってきて……思わず葉月付き合ってる人が居るって言っちゃって」


緑川は頭痛でも堪えるように額に手をやった。その表情には『何であんなこと言っちゃったんだろう』と顔に書いてあった。


「ああ、それで二村を利用しようと?」


「まぁ……そんな所です。でも時間稼ぎって言うか二村くんとはいずれ別れるつもりですけど」


いずれ別れる―――?


時間稼ぎ?


「だって二村くんが好きなのはまだ瑞野さんで、あたしは二村くんに利用されてるだけだもん」


よく分かってんな。とは口にはできなかったが。


「ホントは妊娠してないってこと二村は?」


「まだ知りません」緑川は首を横に振った。


「そうだな、寄りを戻すんならその方がいい」


「別れる前に葉月、二村くんよりいい人見つけて二村くんを振ってやるつもりです」


女の執念は怖ぇえな。と俺は若干引き腰。


「それさ、俺も協力するから2月の終わりまでいい男見つけられね?」


2月の終わりは株主総会だ。それまでに緑川にいい男が出現し、総会で緑川が二村に別れを告げたら―――


あいつの計画を阻止できるかもしれない。


「何で2月の終わり?限定なんですか?柏木補佐もこだわってましたけど」と緑川がきょとん。


「いや……そういうのは早い方がイイって言うか…」と言いかけて、でも俺の言い方も悪いな。確かに緑川の質問と疑惑は分かる。


「あーもぉ!」俺はぐしゃぐしゃと髪をまさぐった。


俺の奇行に緑川が若干引いている気がしたが


「その日、総会があるんだよ。二村はお前のパパの後釜を狙ってお前を利用しようとしてんの。でも総会の日にフラれたらあいつの思惑通りに行かないだろう?」俺が手振り身振りで説明すると緑川は分かっているのか分かっていないのか目をぱちぱち。


「そう……だったんだぁ……だからそれまでに……って、そんなことならわざわざ好きな人をそれまで作らなくても葉月、その日に別れを言い出しますよ」と緑川が顔を歪める。


え―――?