Fahrenheit Ⅳ


「ただいま~」と俺が家に帰ると猫のルカはゲージの柵をまたもカリカリと掻いて外に出たがった。


「よしよし、寂しかったな~。明後日から二日程留守にするけど、ペットホテル予約しておいたから大人しく、でも元気にしてるんだぞ~」と小さい子に言い聞かせるように言うと猫のルカは納得したのか「にゃぁ」と小さく鳴いた。


理解したのかどうかは謎だけれど、俺がいなくて大丈夫かなぁ…


若干不安もあるが決まっちまったものは仕方がない。


と言うわけでこの日も早めに就寝し、次の日は朝からそのまた次の日の出張日の用意をしていた。スーツは二日連続でもいいが中のワイシャツとネクタイだけ代えて、後は下着類を用意。必要な書類やノートPC、それから瑠華に買ったプレゼントをスーツケースに詰め込み、準備はOK。


それでももう一度チェックをしていると電話が鳴った、


着信は緑川で


「またあいつか」と言う思いで若干うんざりしながら


「はい」と短く答えて電話に出た。


『あの…部長、今ちょっと外で会えませんか?』


今ぁ?まぁ暇してるっちゃしてるけど。


緑川とは新年会、瑞野さんと派手にやり合ったときからまともに口を利いていない。


「……まぁいいけど…」って答えてからちょっと後悔。


何で俺が休みの日にわざわざ緑川と?


緑川が指定してきたのはここからそう離れていないカフェで、あいつなりに気を遣ったんだろうか、俺は徒歩でそこまで向かうことができた。


カフェは最近できたばかりのようでまだ真新しかった。白いしっくいの壁にカラフルな屋根。テラス席もあったがさすがにこの季節、誰も利用していなかった。


ガラスの扉を開けるとカウべルが鳴り、店内から若い女性店員が「いらっしゃいませ~おひとり様ですか?」と声を掛けてきた。


「いえ、待ち合わせで」と言うと、奥の方の席で「部長~」と緑川が手を振っていて「あ、ツレが居たんで」と言うと店員はご丁寧にも案内してくれた。緑川はモヘアのニットに同じ色合いのティアードスカート、と言う姿で普段制服を見慣れているせいか少しだけ違和感。


正月は瑠華に目が行っててあんま見てなかったけど、こいつって普通にしてたらそれなりにやっぱ可愛い??


「ホット(コーヒー)で」とおしぼりとお冷を持ってきてくれた店員に早速頼むと、緑川のテーブルにはすでにミルクティーらしきものが置いてあった。


「で?話って言うのは?」せっかちに聞くと、緑川はもじもじとしながら




「あたし―――そろそろ二村くんとやり直そうかと思いまして」



は――――?