Fahrenheit Ⅳ


「時計なんてどうだろう?」と俺が二人を振り向くと


「はぁ?ティファニーの?お前ティファニーの時計なんてどんだけすると思ってんだよ。てかティファニーの時計って気持ち的に重くね?」


何とでも言え。例え気持ちが重くても俺ができる最低限のことをしてやりたい。


「まぁ値段的に流石の俺も今すぐペアにはできねぇけど瑠華の分だけなら」


「啓人がそう言うなら一度見に行ってみましょうよ」と綾子が俺と裕二の背中を押す。


流石Tiffany、百貨店内に入っているジュエリーショップと違って店舗が存在するぐらいだからな、白いふわふわの絨毯の上、あちこち警備員やら店員らしき人物が立っている。


腕時計のコーナーを見つけて色々商品を見ていると、どれも50万超えが当たり前。


やっぱ瑠華一人分だな。クスン…不甲斐ない俺でごめん瑠華。


じっくりとどれが瑠華に合うかなーと眺めてると、あまりに真剣な目つきだったのかすぐに店員が寄ってきた。彼らからしたらいかにも若者って言う感じの俺らにも感じよく接客をしてくれる。


「何かお探しですか?」


「え、ええ……ちょっと贈り物用に…」と何とか答えると


「女性へですか?男性へですか?」と答えが返ってきた。


「女性です」と何故か裕二が答える。


「どういった感じの方ですか?」と聞かれ「えーっと、24……今度5になるんですけど、可愛くて仕事が好きで」


「おい、あんまそんな情報必要ねぇんじゃね?」と裕二が小声でこそっと耳打ち。


分かってるよ。でも他に何て答えりゃいいんだよ。


しかし店員は不可思議そうな顔をせず


「ではこちらのユニオン スクエア 20MM ウォッチスチール ダイヤモンド&ティファニーブルーの文字盤がおススメですよ。どんなお洋服にも似合うと思いますし特にスーツ等を着用されている方でしたら違和感なくお似合いになるかと」


うーん……スーツを着てるときもあるけど基本は私服だしなぁ。でも瑠華は色んなタイプの服を着るし、その時々によって時計も変えている。このティファニーブルーの文字盤も嫌味じゃない程、きれいだ。


値段を見ると¥649,000となっていた。てか店員もいきなり吹っ掛けてきたな……俺ってそんなにカネ持ってるように見えるのかな。そうだったら嬉しいが。


う゛~ん……これぐらいなら……