「俺?俺に何ができるの?」
「それは追々話します。私の切り札は今あなたしかいません」
あたしはすっとテーブルに一枚の写真を滑らせた。それは葵さんがまだピンクの髪のとき、マックスに雇われた誰かが撮ったのであろうあたしと葵さんがファミレスで喋っている写真。
「え!こんな写真誰が撮ったの?まさか空汰?」葵さんは目を丸めた。
「いいえ、これは二村さんの仕業ではありません。出所は言えませんが。私たちは恋人同士だと勘違いされているようです」
「………」その写真を眺めて葵さんは口を噤んだ。
「私にとっては都合の良い事実です。このまま葵さんが私の彼氏だと思わせておけば」
「ねぇ瑠華ちゃん」と葵さんがテーブルに乗せたあたしの手をそっと握ってきた。
「この間のプチ旅行」と言われ
「湘南ですか?あの時はお付き合いいただきましてありがとうございました」
「急に帰っちゃってごめんね」と頭を下げられ
「いいえ、急に誘ったのは私ですから。考えたら葵さんにだって都合があっただろうし」と答えると
「都合なんてないよ、いや、あるのか……傷ついてる瑠華ちゃんに付け入るのは俺の流儀に反してるかな…って思って。いや、今まで流儀何てへったくれもなかったけど瑠華ちゃんに会って気づかされたって言うか……」
傷ついているあたしに付け入る?
確かにあのとき、あたしは傷ついていた。それを葵さんに話したつもりはないのに、この人は見抜いていた―――?
「何が言いたいのですか?」
言っている意味が分からず葵さんを見つめると、葵さんは顔を覆い
「あー!瑠華ちゃんて仕事はできるけど恋愛面では全然鈍いね」
鈍い、と言われてちょっとムっときたが、葵さんに一々怒っていても時間の無駄だ。
「葵さん、あなたが何を言いたいのか分かりませんが、あなたは私にとって大切な人」
何せ最後のカードなのだから。



