通話を終えてリビングに戻ると、ユーリは紫利さんの手助けを受けながらも食事を進めていた。
「どうしたの?怖い顔して」
紫利さんがいち早く気づいて、あたしは自分が”怖い顔”をしていることを初めて自覚した。
いけない。ユーリの前でこんな顔をしていては。
「いえ、ちょっとトラブルで」と曖昧に笑って、
「July, is Yukari's food delicious?(ユーリ、紫利さんのご飯は美味しい?)」と聞くと
「Yes!(うん!」)とユーリは子供用のスプーンでポテトサラダを掬っていて、それがお気に召したのかポテトサラダは殆どなくなっていた。
ポテトサラダには新鮮なサーモンとほうれん草が入っていた。ユーリはそれが気に入ったようだ。
「ねぇ、本当に大丈夫?」紫利さんが少し不安げに眉を寄せあたしに聞いてくる。
「今のところ打開策はありません。このままじゃ緑川派に飲み込まれるのが目に見えているのが現状です」紫利さんには詳しく話してないけれど、あたしの表情で悟ったに違いない。ちょっとため息をつくと
「何か方法はないの―――?」
紫利さんに聞かれ、あたしは頭を横に振った。
あたしの最後のカード、ジェイクはカードを捨てた。
あたしの残っているカードはもうない。
でも、どこかに必ず穴がある筈。緑川派は一枚岩と言うわけではなさそうだ。それを何とか調べられないかしら。
「Mom, this is delicious. I want seconds.(ママ、これ美味しい。お代わり欲しい)」とユーリがポテトサラダの入ったお皿を手に掲げていて
「You're such a glutton!(もう、食いしん坊さんね)」とあたしは微笑みながらユーリの頭を撫でた。
「There's still more if you want. I'm glad you like it.
(まだお代わりはあるわよ。気に入ってくれて良かった)」と紫利さんが席を立つ。
そう言えば今日は13日の金曜日。
あたしは殺人鬼ジェイソンの真似をして手を挙げると、ユーリはキャッキャっとはしゃいだ。
13日の金曜日なんてユーリの知る映画じゃないのに、ジェイソンの物まねは面白いのだろうか。
愛しいユーリ。
こんな風にいつまでも二人で笑い合っていたい。
あたしに残されたカード。
たった一つ残っていた。



