Fahrenheit Ⅳ


そう言えば、仕事と言ってユーリにかまけてなかった。夕食を一緒に摂る暇もなく仕事に没頭していた自分を恥じる。


今日は紫利さん特製のマカロニグラタン、ポテトサラダと玉ねぎのスープ、紫利さんの得意料理だというローストビーフ。


熱々のマカロニグラタンは頬が落ちる程美味しい。海老とスライス玉ねぎカボチャ、ブロッコリー。栄養面もきっちり考えてある。ユーリには、ふぅふぅと息を掛けながら少し冷まして彼女の口に入れると


「Yum!(美味しい!)」とユーリは破顔。


「Yeah,so good.(そう、良かったわ)」紫利さんも笑った。


「どうしたらこんなの上手に料理ができるんですか、何を食べても美味しいものばかり」


「一人暮らしが長かったし、結婚してからも専業主婦だったからね」と紫利さんは笑う。


「It tastes better than what the housekeeper made!(お手伝いさんが作ったのより美味しいよ!)」


「A housekeeper? Doesn't Grandma make it for you?
(お手伝いさん?お祖母ちゃんは作ってくれないの?)」と紫利さんが聞くとユーリは少しつまらなさそうにソファの上でまだ短い脚をぶらぶらさせて俯いた。


「Grandma doesn't do anything for me.(お祖母ちゃんは何もしてくれないよ)」


まぁ考えたらあのジェシカが料理なんてするわけないか。いつも張りのあるきれいな手にはこれまたきれいなネイルが乗っている。あの手で料理とか考えられない。


お手伝いさんに囲まれて、親の愛情をあまり知らない子。


あたしは―――仕事とかまけてせっかくユーリと一緒にいるのに、全然ユーリのこと見てやれなかった、


そのことに自分に腹が立った。


いくら仕事があるとは言え、もう少し母親らしいことをしてあげなければ―――