Fahrenheit Ⅳ



「野球、それはいかにも男の子らしいスポーツですね」と菅井さんはすぐに笑顔になった。


ほっ


これで疑いが晴れた??


「まぁ自分の意思って言うより親父の希望の方が強かったですけどね。最初の方はほぼやらされてる感で」


「そうでしたか…すみません不躾なことを聞いて」


「いえ!結局最後の方は俺自身楽しくてやってましたけど、靭帯やっちまって野球続けれなくて敢え無く退部することになっちまいましたが」


「そうでしたか…」またも菅井さんは項垂れる。


「俺自身そんなに気にしてないので!この話はおいといて~」俺は両手を左から右へと移動させ


「それより真咲のつわりってそんなに強いんですか」


「まぁ、だいぶ過敏ですね」


瑞野さんもつわりが酷そうだった。そして気分の浮き沈みも。


瑠華の場合はどうだったのだろう。


ふと猫のルカが居る方を見やるとルカはハウスから出て、ケージの周りをぐるぐる歩いている。


何か面白いものでも発見したのだろうか、時折寝転がって前脚で宙を掻いていた。


俺が猫のルカの方を見ていたからか、菅井さんもそちらに目を向け、次いでリビングのローテーブルの上に乗せられたノートPCがピカピカ点滅しているのを見たようだ。


「神流さん、ノートPC点滅してるようですが」


そう指摘され確認する意味で蓋を開けるとリモート希望の画面が開いていた。


何だろう。殆ど何も考えずオンラインにすると


画面いっぱいに瑠華の顔が映し出された。


顔には化粧けがなく赤いティファニーのメガネ姿、白いオーバーサイズのシャツの上にカシミアっぽいストールを羽織っている。


『お疲れ様です。夜遅くに申し訳ございません。先ほどいただいた資料に不備があり…』と瑠華の声が菅井さんにも聞こえたのだろうか、菅井さんがこちらに歩いてきた。


俺が瑠華の顔を見えるってことはこっちの姿も瑠華に見えているってわけで……


『菅井さん?』と瑠華はメガネの向こう側で目をぱちぱちさせながら慌てて髪を少し整える仕草。


『失礼しました。来客中に』


「いえ、僕が急に押しかけたんです。お気になさらず。こんな時間までお仕事ですか?」と菅井さんが答える。


『ええ、少し不備があったので確認を…』


って言うか!瑠華のすっぴん!瑠華のメガネ!例え菅井さんにも見せたくない!


「あ、後でもう一度確認するからまた後で」


『はい、承知いたしました。申し訳ございません』


瑠華がオフラインにしたのか画面は真っ黒になった。