Fahrenheit Ⅳ


「どうしたんですか?また真咲と喧嘩でも?」


家に迎え入れると、菅井さんはほんの少しげっそりと顔を青くさせていた。


「まぁそんな所です。家を追い出されちゃって。元々気が強い所はありましたが、妊婦だからか怒ると手を付けられないぐらいで」


と肩を落とす。


「それは……大変ですね…」と言うしかない。真咲の”あれ”は性格だ。菅井さんの前で今まで猫を被っていたに違いない。


結婚生活大丈夫かなぁ……即離婚とかならなきゃいいけど。まぁ菅井さんは俺よりかぁなぁり、心が広いからそうならないと思うが、と心配していると、ゲージに戻した猫のルカを見た菅井さんが


「猫?可愛いですね~♪すごいちっちゃい」


「あー、何か成り行きで?野良猫だと思うんですけど怪我して病院連れてったらそのまま懐かれちゃって」とは言ったものの


猫のルカは菅井さんの登場でちっちゃい猫のハウスに隠れてしまった。


人見知りする子なのだろうか。俺にはすぐ懐いたのに。


「可愛いですね~、名前は何て?」


「る……」と言いかけて慌てて「ルイージ」と答えた。


「ルイージ?さっきちょっと見えたけどあのこ女の子じゃないですか?」


菅井さんの鋭い突っ込みに


「ルイージのキャラが好きなんですよ俺」と慌てる。


「へぇ、マリオじゃなくて?」


「そ、おとーとの方が……」言いかけて思わず口を噤んだ。マックスも次男坊だったな。嫌なことを思いだした。


そんなことを考えてると菅井さんの腹がぐぅと鳴った。菅井さんは恥ずかしそうに慌てて腹のあたりを押さえる。


「すみません、今日忙しくて昼食抜きだったんで」


「そうだったんですか。簡単なもので良ければ今作りますよ。食べながら飲みましょうか」


「え?流石にそこまでお手間を取らせるわけには」


「たまにはこんな夜もいいんじゃないですか?」俺は笑った。


冷蔵庫には卵と、昨日作ったばかりのチャーシューが残っている。冷凍庫には海老とその他もろもろ魚や肉が眠っていて、野菜室にもレタスやらパプリカやミニトマトなんかもそろっていた。


俺は簡単にシャーチューと卵とねぎでチャーハンを作り、レンジで解凍した海老でアヒージョと、サラダを作った。


「すみません、あまりもので作ったので大したもの作れませんでしたが」とテーブルに並べていると


「いえ!久しぶりです、まともな料理」と菅井さんは感動したようだ。


まともな料理って普段この人何食ってンの??とちょっと心配になったり…