Fahrenheit Ⅳ


午後から早速、難しい案件が転がり込んできた。瑠華無しでは解決できない問題で、仕方なしに俺は持ってきたノートPCを立ち上げると早速瑠華とリモート通話。


社内メールで予めリモート会議をする旨を伝えていたから、時間通りオンラインにすると瑠華の顔が右上に映った。左下には案件の資料の一部を映してある。


『お疲れ様です』


瑠華の部屋の背後が映り、そこはどうやらリビングだと気付いた。相変わらずこざっぱりときれいだ。あまり生活感を感じられないと言うか、どこかのモデルハウスのようにも見える。


「お疲れー、ごめんね早速」


『いえ、迷惑をお掛けしているのは私ですので』と瑠華が律儀に頭を下げる。


「早速だけどさー、この資料のこの部分さー…」と喋っていると、瑠華の背後から


『Mom!』と言って小さなユーリが瑠華の肩に抱き着いた。


ヤベ!


俺は慌ててノートPCの蓋を閉じ、誰にも見られてないよな?と慌てて周りをキョロキョロ。幸いにも佐々木は電話対応中で、瑞野さんはコピーを取りに行っている最中だった。


ふぅ……


自分が承諾したのに、初日から何てデンジャラスな…


まだ佐々木は電話が長引いているし、瑞野さんは結構な量のコピーを取っている。俺はそろりとノートPCの蓋を開けると


『先ほどはすみませんでした。ユーリは寝室で遊ぶように連れて行きましたので。紫利さんも一緒なのでしばらくは大丈夫でしょう』


「うん、こっちもごめんね。柏木さんに頼りっぱなしで」


それから俺たちはリモートで打ち合わせをして資料の確認やら先方への営業方針などを語り合い、その作業は30分程で終わった。


リモートをオフラインにすると、急に肩の力が抜けた。


つ……疲れる。