Fahrenheit Ⅳ


「でもさ~、考えてみろよ。二人の間は中学からだろ?そんな長い間想い合ってたのなら早々簡単に諦められるものじゃないって」


そうなんだよなー


俺なんて瑠華と会ったのはたったの半年だって言うのに、取り戻すのに必死だしこの先一生忘れることはできないだろう。


「愛と歴史の比重ね」と綾子がチキン南蛮を口に入れながら何だか詩的っぽいことを言う。


それは一見ロマンチックに聞こえるが、深堀していくとどちらが重いのか、という問題になる。


愛を選んだのならロマンチックだが歴史を裏切ってまで私欲に走るのは最低なことだ。


食事を終え、会社に戻る際も


「でもさぁ、このまま瑞野さんに付きまとわられたら俺、ずっと瑠華に勘違いされたままになっちまう。そしたらまた瑠華を傷つけるだろ?」


「また負のループだな」と裕二が他人事のように笑う。


「てめ、ひとごとだと思って!」


「まぁ今度は無視しないことね」とあっさりと綾子。


それができたらなー………


大体二村の野郎が変な陰謀を企てなければこんな大ごとにはなってなかったんだよ。


あの悪魔め!


ポーン


エレベーターが8階に到着すると開いた扉の前にちょうど二村が立っていて、ちょうど二村のことを考えてたからな。思わず後ずさりしたくなった。俺としたことが。たかが二村にビビッてんじゃねぇよ。


「お疲れ様です」と二村は少し疲れたような顔色で挨拶をしてきた。


「おう」と俺も答え、入れ違いになるかと思いきや、


「あの」と二村に呼び止められた。


何だよ、俺はお前と話すことなんて何もないんだよ。


「葉月、神流部長に何か言ってませんか?」


今度は緑川の心配かぁ?お前も忙しいヤツだな。


「はぁ?緑川が俺に?何も聞いてねぇよ」事実、正月とその後の新年会以来あいつと顔を合わせていない。


はぁ……


二村は深いため息を吐いて下るエレベーターに乗り込んでいった。


二村と緑川はまだ仲直りしてないんだな。


まぁ、その方がこっちにとって都合がいいが。


二村のことだ。緑川の気持ちを射止められなかったら次に何をしでかすか分からない。


まだまだ二村の行動には目を離せないな。