Fahrenheit Ⅳ


親父は横一列に並んだ俺たち三人のソファの対になっているソファに腰掛け


「実は、1月の16日から一泊二日で奈良支店にNY支社から社員が視察も兼ねて来るらしいが、物流管理に詳しくかつ英語に長けている、人材に行って欲しいんだよ」と親父は瑠華に視線を向けた。


奈良支店にNY支社から社員が?初めて聞いた。


「かといって柏木さん一人に向かわせるわけにもいかない。彼女の部長である神流部長、それから佐々木くん」


名指しされた佐々木はびくぅと肩を揺らした。


「君も現地の勉強がてら様子を見てきて欲しい」


「べ……勉強…ぼ、僕異動になるってことですか?」佐々木が口の中でもごもごと口ごもる。


「すぐに異動の話はない。悪い話じゃないと思うよ?若い頃に他の支社で勉強することも成長につながる」と親父は笑顔を浮かべた。


確かに、本社一筋の佐々木にとって出張は初めてのことだ。今後のことを鑑みても悪い話じゃない。


話は分かったが、奈良?新幹線とJRを乗り継いで、朝早く出ても昼までには着くのか…?


「とりあえず考えておいてくれ」と親父は言ったが、『考えておいてくれ』=『行け』だ。


思わず頭を抱えたくなった。


「ひとまず経理部と話し合って出張費の調整とか」と俺が言うと親父は目だけを上げて案に何があっても『行け』と物語っていた。