Fahrenheit Ⅳ


短い報告が終わり、俺は佐々木だけを部署に返した。電話番を頼むという無理なこじつけで。


佐々木は不服そうに見えたがしぶしぶと言った感じで部署に戻っていった。


後に残った瑞野さんと瑠華と俺。


「瑞野さん、先ほども言いましたが私はあなたを全力でサポートします。お腹の子供のことは少しでも不安があれば部長に相談してください。私は状況を鑑み駆けつける予定ですので」と瑠華が言い、瑞野さんの手をきゅっと握ると瑞野さんは泣きだしそうに瞳を揺らした。


「それでも不安で……」


「大丈夫です。あなたには私と部長がついていますので」と瑠華が力強く言うと瑞野さんは涙を引っ込めて少しばかり力強く頷いた。


その後三人でフロアに戻ると、ちょうど佐々木が内線電話を受け取っている最中だった。


「部長!会長室から呼び出しです。部長と柏木さんと……何故か僕も…」と佐々木は不安を顔にいっぱい浮かべて受話器を握っていた。


俺と瑠華と、佐々木―――?


何かやらかした記憶はない。何故この三人のメンバーなのか。いつも呼ばれるのは俺か、俺と瑠華のセットなのに。


「とりあえず会長の呼び出しは必須だ。行くしかねぇな」と俺は深いため息。


俺と瑠華がエレベーターに向かい、その後を落ち着かない様子で佐々木がついてくる。その足取りは酷く重そうだった。顔色も酷く悪く今にも倒れそうだ。


「あの…僕、何かやらかしちゃったのかな……それで部長と柏木さんに迷惑を……?」


「佐々木さん」瑠華がゆるく巻いた髪をなびかせ振り返った。


「あなたはとても良く働いてくださる社員です。多少のミスがあったのならそれは私たちの問題。もし会長からおしかりがあったのなら私が全力で佐々木さんを庇います」


瑠華……


かっこいいぜ!!キュン…してる場合じゃないって。


それ、本来俺が言うべき台詞じゃね?上司失格↓↓


会長室に呼ばれて、佐々木は初めて入る会長室に緊張しているのか熱くないのに額から汗が流れている。


親父の席は不在だった。


カチコチに固まったままの佐々木に綾子がコーヒーを出す。それをガタガタ言わせてコーヒーに口を付ける佐々木。相当緊張しているに違いない。


それから五分後


「やぁ。悪かったな急に呼び出して」と親父……もとい会長が顔を出した。その顔は不機嫌ではなく、かと言って笑顔もなく不愛想と言ったら言い方が悪いが機嫌は悪くなさそう。付き合いが長いから分かる。これから語られる話は決して悪いことではない、と。