Fahrenheit Ⅳ



♠ K ♠


人の信頼を取り戻すには大変なことだ。


特に酷い裏切りをした場合、もう二度と信頼を得られないか、得られるまで時間が掛かるか。


信頼を再構築したいのなら、それなりに覚悟と勇気がいる。裏切るのなら、それだけの覚悟が必要だ。


20XX年 1月 9日 月曜日


この日は祝日だったが、仕事はじめが新年会と言うことでカレンダー通りに休み、というわけにはいかず一日前倒しで仕事が始まった。


それを不服そうにしていた社員たちが、あまり明るくない顔で続々と出社してくる。


ちらりと隣の部署、物流事業本部を覗くと、緑川も二村も出勤していた。しかし二人が口を利いている雰囲気はまるっきりない。傍目で見たら険悪とまではいかないが、あまり良くいってないことが分かる。


案の定「二村くんと緑川さん、喧嘩でもしてるのかしら。困るわ、同じ部署なのに険悪な雰囲気が流れて、それを察した皆もどこかギクシャクしちゃって。だから社内恋愛って難しいわよね」と内藤チーフにこそっと聞かれて


「さぁ、俺もそこまで二人と親しくないんで」と引きつりながら苦笑い。


「あらそぉ?緑川さんは去年、神流部長の所に居たし何かと相談してるかと思ったけど」


ギクギクぅ


女の勘ってのは凄いな!


しかし絶賛社内恋愛中、しかし今は別れているけれど内藤チーフには見破られてないみたいで良かった。まぁ瑠華は鉄面皮で悲しかろうと嬉しかろうと表情が変わらないのが功を奏しているのか。俺の方はそうにもいかないが。瑠華の一挙手一同に戸惑ったり悲しんだり、喜んだり。


社内恋愛は絶対するか、と決めていた俺が今は超近距離の社内恋愛で、その距離も遠のきつつあるのに俺はまだ諦められないでいる。


外資に続々と…と言っても四人しかいないけど社員が出勤してきて、四人が揃ったところで俺は会議室で会議を行う旨を伝えた。


佐々木や瑞野さんは不思議そうにしていたが、瑠華だけは事情を知っている。って言うか相変わらずの鉄面皮で何を考えているのか分からないが、俺たちは第二会議室に向かった。


第二会議室は第一と違って少し規模が小さい。円卓が中央に、PCから送る資料のスクリーンが前方に構えている。


俺は全員をそこに座らせると





「言いにくいことだが、しばらくの間、柏木さんの私情があり彼女を時短勤務にすることにした」




と言い出すと


「「え!?」」と佐々木と瑞野さんが声を上げた。