Fahrenheit Ⅳ


「ああ、飲みすぎちゃった。ついつい楽しくて」と紫利さんは白い頬を僅かにピンク色に染めていた。


「ついでなので泊っていかれてはどうですか?ゲストルームでしたら空いてますので」と言ったが、すぐに「しまった、旦那さんが待ってるかも」と考え直した。


しかし紫利さんは


「え?いいの?」と意外な答えが返ってきた。


「ええ、良かったらお風呂にも入っていってください。使い捨て歯ブラシもありますし、私のでよければメイク用品も衣類もありますので」


「本当?助かるわ~、そういう生活用品は何も持ってきてなくて」と紫利さんは手を合わせる。「でも瑠華ちゃんの服、私着れるかしら。瑠華ちゃん細いから私入るかどうか心配」と紫利さんは真剣に言って頬に手を当てる。


何だか笑えてきた。


「紫利さんも十分細いじゃないですか。大丈夫ですよ」


紫利さんのスタイルはあたし、と言うよりどちらかと言うと心音や綾子さん寄りだ。つまり少し背が高くて手足が長く、出ているところはしっかり出ているのに細い所は細い。入らない場所と言うのはきっと胸ね…と考えるとちょっとがくりとくるが、


あたしは紫利さんにバスルームとパウダールーム、ゲストルームを説明して、バスルームの使い方を説明すると


「分かったわ、ありがとう。瑠華ちゃん今日はありがとうね。後は一人でできるからゆっくり休んで」


と言われ、あたしはユーリの眠っている寝室に向かった。ユーリは隣にあたしがあげたくまちゃんのぬいぐるみを並べてすやすやと心地よさそうに眠っていた。


あたしも布団をめくりあげその隣に潜り込むと、ユーリの横顔を見つめて、見つめて―――


こんな日が来るとは二度と思わなかったから、その幸せをかみしめ、一晩中見てても見飽きない彼女の寝顔を見つめながら、自身もいつの間にか眠りに入っていた。


20XX年 1月 9日 月曜日


この日は祝日だったが、仕事はじめが新年会だった為、この日は全員が通常出勤になった。


それを不服に思っている社員も多いだろうが、外資の人間は誰一人欠けることなく出勤してきて朝一番、就業時間がはじまり啓が立ち上がると


「みんな、ちょっと話したい事があるから会議室でちょっと集まってくれないか?」と言い出した。


「会議?珍しいですね、外資が。初めてじゃないですか?」と佐々木さんがあたしにこそっと聞いてきたけれど、あたしは曖昧に頷いた。


話したい事ってのは分かっている今先に自分から言えることではない。


ここはやはりリーダーが説明をして、皆を納得してもらう他ないのだから。