Fahrenheit Ⅳ


「ねぇ、そのひとかっこよかった?」紫利さんがちょっとニヤニヤと聞いてきた。あたしは吸っていたタバコで思わずむせた。


「まぁ……モデルか俳優さんのような方でしたけど。背も高くて」


そう言えばマックスぐらい背があったかしら…


ふと考えてふるふると頭を振る。今マックスのことを考えたくない。


「勿体なかったわねぇ、その時啓人と付き合ってなかったんでしょう?」


今度はあたしが苦笑をする番。


「その時誰ともお付き合いする気が無かったので。それにその方女性ものの香水が香ってきて……」


「なぁに~それ、啓人と同じだけ遊び人だったわけね。断って正解だったわ」


「でもお連れさんの方は常識的な感じがしてちょっと好感が持てました。確かトキ……なんだったかしら……ああ、そうだトキタさんだわ。ペントハウスの方がそう名前を呼んでいて。落ち着いていていかにも大人の男性って感じで」


「あらぁ、いいじゃない」と紫利さんはからかうようにあたしの脇バラを小突く。またもタバコの煙でむせそうになった。


「そんな、よく知らない方と、それも一回だけですよ。お会いしたのは」とあたしも白ワインを口につけると


「瑠華ちゃんと恋バナするのって何だかんだはじめてよね~」と紫利さんが頬を緩めた。


確かに、今あたしは今色んなことを忘れて楽しんでいる。