Fahrenheit Ⅳ


夕飯は紫利さんが作ってくれたフィッシュフライとサラダ、トマトのリゾットとマカロニサラダだった。


ユーリはそれを全部美味しそうに平らげ、お腹がいっぱいになったところでお風呂に入れ、寝る前にNYから持ってきた絵本の読み聞かせをあたしの寝室のベッドでしながら、絵本を読んでいる間彼女は完全に寝入った。


すぅすぅと心地よさそうに寝息を立てるユーリの額にそっとキスを落とし、あたしがリビングダイニングに向かうとキッチンでちょうど跡片付けを終えた紫利さんがエプロンで手を拭きながら、


「ユーリちゃん寝た?」と聞いてきた。


「ええ、紫利さんのご飯が美味しかったみたいでベッドでも明日は何かなって楽しみにしてました」


「ユーリちゃん、いい子ね。好き嫌いもないし、お行儀はいいし、トイレも一人で行けるし、私のこと受け入れてくれて今日もたくさんシルバニアファミリーで遊んだわ。ちょっとは母親気分を味わえて私も楽しかった」


と紫利さんは上品に笑った。


「それは良かった。将来、お子さんが出来た時の参考にしてください。紫利さん、今日はお車で?」と聞くと


「ええ」と返事が返ってきた。「荷物が多くてね」


そっか……できればこの後もう一杯やって話し合いたかったのに。


「瑠華ちゃんも明日仕事でしょう?今日は疲れただろうから、ゆっくり眠って。何よりユーリちゃんとの時間を大切に」と色っぽくウィンク。「明日の朝ご飯、冷蔵庫に入れておいたから温めて食べて?」


「ありがとうございます」礼を述べ、紫利さんを玄関口まで送って行くと、紫利さんは黒のエナメルがきれいなルブタンのパンプスに足を入れようとしてその動作を止めた。


「やっぱ辞めた」


え―――?


あたし、言ってはいけない何かを言ってしまったかしら。今更ユーリの面倒を見てくれる人を探すのは一苦労、どころか二苦労も三苦労もいいる。


どうしよう…


「今日は瑠華ちゃんと呑んでから帰るわ。どうせ明日も来るわけだし。車はその時に取りにくるわ」


びっくりした。


一瞬、ユーリの世話を辞めたと言われた気がして焦ったが、紫利さんがそう言い出してくれて嬉しかった。