「でも……瑞野さんとも親しくしてたし」
今更思い出したくないが、無視されたことがやはりあたしの心の中でまだくすぶっている。しかも輪をかけるように女性社員の『付き合っている』と言う噂話を聞かされて、どんな気持ちだったか。
「瑞野って……例の二村のぼーやの本命の子?」
「そうです……」
「そんなの気にしないで、その瑞野って子の当てつけでしょう?好きな男が他に行ったから。女ってそういうものよ」
そうなのだろうか。そんなに簡単な感情なんだろうか。
少なくともあたしはマックスが浮気を繰り返していても、自分が浮気をすることは考えなかったけれど。
紫利さんは白身魚の切り身に小麦粉をまぶしながら、
「長い間夜の世界に居たからね、その辺のことはちょっとは他人より詳しいつもり」
そうなのか……
じゃぁ啓があのときあたしから視線を逸らしたのは単に二村さんの目を気にして―――?
「でも瑞野って子も厄介ねぇ。あなたと啓人の仲を知ってるわけでしょう?なのにあからさまにそんな態度取るなんて。まぁ若いから突っ走る傾向があるのかしらね。特に恋愛になると後先が見えなくなってしまうのかも。流石に後ろにも目がついてるわけじゃないしね」
「じゃぁ瑞野さんはまだ二村さんを好きだと?」
「さぁそこは分からないけれど、二村クンに裏切られたことは確実だし、寂しい気持ちもあるわよね」
確かに……
「でもこれは完全なる女の勘だけどね、その瑞野って子、啓人のこと本気じゃないわよ」
え―――?



