Fahrenheit Ⅳ



こんなことで瑞野さんと仲良くしていた贖罪にもならないだろうが、俺の気持ちは瑠華にだけ向いていると知って欲しかったんだ。


今更遅いかもしれないけれど。


結局、払う払わないで少しの間言い合いになったが、結局瑠華が折れた。


「I love kind Kate.(優しいケート、大好き)」と人形たちの家が入った箱を俺が片手で持ちながらレジに向かおうとしていると、突如きゅっと空いている方の手を握られた。


「I love you too, Mom.(ママも大好きだよ)」とユーリは瑠華の手も繋いで、俺たちは三人まるで家族のように並んで歩いた。


こうゆうの憧れだった。もちろん瑠華だけに、だけど。俺は小さい頃母親と父親とこうやって歩いたことないから尚更かもな。


「Hey, are Kate and Mom close?
(ねぇケートとママって仲良しなの?)」との質問には悩んだ。「Good.(仲良しだ)」と即答したいのに即答できない俺。瑠華の反応が怖い。


しかし「Yeah, that's right. (ええ、そうね。仲良しよ)」と瑠華がユーリに微笑んでいて、その場の嘘でもいいから俺は嬉しかった。


大きな箱や人形たちの詰まった袋を瑠華のトランクに積み込むと


「本当に、今日は何から何までありがとうございました」と瑠華がきっちりと頭を下げる。その顔に笑顔は浮かんでいなかったが、少しは気を許してくれたかな。


こんな―――もので吊るやり方、好きじゃないが、少しでも瑞野さんとの仲の誤解を解きたい。


必死感が丸出し、だと裕二には言われそうだが何とでも言え。


必死―――なんだよ。


帰り際ユーリがこちらをふりかえり”バイバイ”と言う意味でか軽く手を振っていて、俺もそれに返した。


家に帰りつくとゲージで眠っていた子猫が俺の帰宅後すぐに目を覚ましてカリカリとゲージの柵の部分を掻いている。


「ごめんな~遅くなって」とゲージを開けると猫は足を引きずりながら俺の足元にすりよってきて頬ずり。


「寂しかったんだな~、でも明日から仕事だし、もう少し慣れてくれよ?」と猫を抱きかかえ俺は買ってきた柔らかめのキャットフードを皿に空けた。猫は最初物珍しそうにそれを眺めていたがやがてぺろりとそれを舌で舐めると、おいしかったのかゆっくりと食べ始めた。


半分程で腹がいっぱいになったのかまたごろりとその場で寝そべり、また俺はソファに連れて行く羽目に。


俺もソファに寝そべり、「いっぱい食わなきゃ立派に育たないぞ~」とからかい半分で猫を抱き上げると猫は嬉しそうに「にやぁ」と鳴いた。


その晩も俺たちは一緒に寝ることになった。相変わらず猫は俺の胸の上に乗ってすやすやと眠っている。


その晩は疲れていた。酒も呑んでいないのにあっけなく眠りにつき、夢を見た。