Fahrenheit Ⅳ


オモチャ屋には男の子が好みそうな車のミニカーやら、小さい乗り物みたいなものから、女の子がいかにも好みそうな人形やらおままごとグッズなど様々な種類が目が回りそうな程揃っていた。


一通り見て回ったのち、ユーリが足を止めてじっと見つめていたのはシルバニアファミリーのコーナーだった。そう言えば瑠華も小さいころシルバニアファミリーのことが好きだった。母娘だな。


「懐かしい。今はお人形が少し大きくなってる気がしますが」とうさぎの人形の箱を一つ手に取って瑠華はしげしげ。


「Mom, I want this one.(ママ、このこ欲しい)」と瑠華が取った人形を指さしユーリが言った。


「Really? It might be lonely for this one all by itself, so should I get a friend for it too?
(そう?このこだけじゃ寂しいからお友達も買ってあげましょうか)」と言うとユーリはまたもはしゃいだ声をあげた。「I want to buy Mom and Dad and make them part of my family.
(パパとママを買って家族にしたい)」とユーリが言い出した時、俺たちは思わず顔を見合わせた。


ユーリは……本当はママと過ごしたかった筈。それを親の(マックスの)都合で引き離されて、寂しい思いをしていたに違いない。


「Oh, I see. Well, Kate will buy it for you. While we're at it, let's buy a house, too. We'll all live together happily.
(そっかぁ。じゃぁケートが買ってあげるよ。どうせならお家も買おう。みんな仲良く生活するんだ)」


それはユーリが叶えたかった世界。もう叶えられないけれど人形たちの住む家ではせめて家族一緒にしてあげたい。


「え?いえ!それは流石に、あたしが払います」と瑠華が慌てて言い、


「いいの、いいの。俺ユーリが気に入っちゃったからさ。可愛い子にプレゼントしたいんだ」


瑠華は目を細めて


「あのぅ…ユーリはあなたの好みの年齢じゃない筈ですが」と低い声。


「違っ!!俺はロリコンじゃないっつうの!俺は瑠華の大切な……」


大切な何?大切な娘だからこそ何かをしてやりたい?


口に出そうになった言葉を慌てて飲み込む。