Fahrenheit Ⅳ


「瑠華は?何で来たの?電車?」と帰り際聞くと、


「いえ、車です。ここにくるとき駐車場はすでにいっぱいで近くのコインパーキングに」と。


「そっか。俺は運よく入れたけど」


「タイミングの問題ですよ」瑠華は淡々と言い、その顔にはやはり淡々とした何かが浮かんでいた。


「それでは明日、私は午前出勤しますが午後からリモートにさせてもらいます」と言われ


「うん、了解。頑張ってね」とそれしか言えない。


そして瑠華たち母子たちは去っていこうとしていたがふと思い立って、俺は彼女たちを呼び止めた。


「ねぇ、いくら紫利さん任せだと言ってもおもちゃとかあった方が良くない?」


「おもちゃ?」瑠華は目を瞬いた。


「うん、瑠華が家でリモートしている間でも一人……もしくは紫利さんと遊べるような」


「そうですね……持ってきたのはあたしがあげたくまちゃんだけですし…」


「あのさ、今から時間ある?行くとき見つけたんだ。この辺に割と大きなおもちゃ屋があって、そこで何か探そうよ」と、少しでも瑠華と一緒に居たい俺。必死な言い訳に聞こえるかな。


「そうですね。それは考えてませんでした」瑠華が目をまばたく。


「じゃさ、俺先車走らせるから後から追ってきて」


「え?啓も一緒に?」と当然の質問をされて、ダメだったかぁ……と落胆していると


「あの……いいのですか?貴重なお休みなのに」と瑠華がちょっと不安そうに顔を俯かせる。


「う、うん!大丈夫!てかやりたい」と俺が言うと瑠華はちょっと安心したように頬を緩ませた。


瑠華は―――俺と居ることに抵抗がないのかな。抵抗されると困るけど。でもきっと瑠華のことだ、単なる不慣れな場所での買い物に不安だっただけに違いない。


街で見かけたおもちゃ屋は大きな店舗構えで、それこそゼロ歳~小学生高学年ぐらいまで遊べるものが男の子女の子問わず並んでいる。


「Wow!(わぁ!)」ユーリは左右に広がるおもちゃの棚を見てはしゃぎながら瑠華の手を取って走って行こうとする。その後を俺は追った。