ココアと俺のコーヒーを持ってテーブルに戻ると
「すみません、ユーリが迷惑を掛けませんでしたか?」と瑠華が心配そうに俺を見上げる。その顔は俺が知っている表情ではなく、初めて見せる”母親”の顔だった。
「うん、いい子にしてたよ。可愛い子だよね、君の小さいころに似てる」と言うと、瑠華の頬にほんの少しピンク色がさした。
「何言ってるんですか」と、またすぐにいつもの調子に戻ってしまったが。
「瑞野さんのことも心配です。彼女のフォローもお願いできれば助かるんですが」
との頼みには
「うん……」と声が小さくなった。
何て言ったって”あの”瑞野さんだ。俺もどう扱っていいか分からない。瑠華も分からないが瑞野さんに対しては『取り扱い説明書』が欲しいぐらい。
「全く会社に出社しないわけではありません。その時に様子を見るつもりではありますが」
「大丈夫、大丈夫」これ以上瑠華に負担を掛けたくなくて俺は曖昧に笑った。「だけど生活は?食事とか」
できれば作りに行ってあげたいな~と思っていたが
「紫利さんに任せたので大丈夫です」
え?紫利さんに??
意外な名前を出されて俺は目をまばたいた。
「ご主人も了承してくださいました」
そっか……年末に会ったって言ってたしね……俺の出る幕はないってことか…
少しでも瑠華の役に立ちたかったのに。
そんな心情を知らないようで瑠華は
「紫利さんは子供に恵まれないようで、無神経なお願いをしてしまったかと思いましたが思いのほか楽しそうにしてくださって、本当に良い方ですね」とメロンソーダを飲む。
「うん、そうだね」そう答えるしかできない俺。もっと気の利いた言葉を述べるべきだったのに、何故できなかったのだろう。



